不気味な侵略者

一部で結構盛り上がってきたので、遠慮なく最初っから魔太郎をいかせていただきます。

ボクは昔一冊だけ魔太郎を読んだことがあって、それを何度も何度も読んでいたようです。それはオリジナル版で言うところの11巻だったことが判明したのですが、これがもう「わすれトンカチ」でぶったたかれた様な気持ちでして、思い出す思い出す。

特に「鑑の中へ」の不思議な雰囲気は、強烈に記憶の引き出しに隠れてました。

もっとも、そんな中にあってもまるっきり忘れることが無いどころか、完全にトラウマと化して心のスペースを大きく占めていた話もあったのです。

それが今回紹介する

「不気味な侵略者」

魔太郎のパパが酔っぱらって見知らぬおじさんを家に連れて帰るのですが、そいつがガンとは文句を言えない人間心理をつつきまくって居座り続けた挙げ句に、そいつの一家までもが現れる。実はそいつらはそうやってヤドカリの様に他人の家を奪っていく連中だった。

と言う強烈な話です。

もうこれが子供心にかなりキまして、荒木飛呂彦の「魔少年B.T.」の最終回でも到底到達できない「いやああな」感じが凄いんです。

さて、今回読み直してみると、それはもう寸分違わず当時のいやな気分が甦ってくるのが兎に角お見事の一言で、A先生の「ヤナ奴描かせたらこの世でTOPクラス作家」の面目躍如。

「まんが道」の武藤を筆頭にして、本を破り捨てたくなるようなキャラは、それこそ無数に登場するのがA先生の漫画の凄いところですが、「魔太郎」と来たら作品の性質上問答無用に各話に最低限一人はヤナ奴が登場するわけです。そんなのもうノリノリなのが伝わる伝わる。

で、そんな中で一家丸ごと最悪と言うのがこの話の凄い所です。

先ず主犯格であるこいつ。

↑いきなりビールを遠慮なくがぶ飲み。こいつのメガネとか髪型とかへの字眉毛とか、とにかく完璧に胸くそが悪くなる素晴らしいキャラクターデザイン。よく見ると毛穴の汚い鼻も相当なもんですが、A先生と来たら心身共にクソ野郎のデザインが、どいつもこいつも完璧過ぎるので、これは絶対に「モデルいるぞオイ」感が強くて、余計な心配してしまう程です。

それにしても説得力ありすぎ。

知り合いと本当の友達になれるかどうかというのは、一緒にご飯を食べるか旅行に行くと分かると言います。結婚とかそういう事を考えている相手とは、必ず一大事の前にどちらかをすると良いはずです。

そんな訳で、こいつときたら読者がうんざりするほど、あの手この手でタチの悪い食いっぷりを見せてくれるのが、かなわない。

先ず目覚めのコーヒーですらコレ

↑子どもの頃に親が「ピチャピチャ言わすな」と何度も激怒していたので、ボクもピチャピチャ言わせてモノを食べる人が大嫌いですが、それだけが理由ではないことに今気付きました。こいつの性もあったんですね、恐らく。

この満足げな表情と目の細さ、加えてカップを持つ指! 観て描いてるとしか思えない臨場感。

コーヒーで舌なめずりは異常です。こんな奴現実に身近にいたら処刑リストですけど、絶対にいそうです。いや居る。

こんな奴がやってきた浦見家の不気味な雰囲気をあらわしたこのコマも傑作

↑このパースの付け方と構図はお見事ですねえ。こういう所でちゃんと画が描ける人は違います。

さあ、どんどんこれを読んでいる人にも嫌悪感を味あわせるタメに続けてコレ

↑なんでこんなに地に足の着いた「生きた嫌悪感」を描写するのが巧いんでしょうねえA先生は。ただ事じゃないです。数多い魔太郎クソ野郎リストの中でも相当の上位に来ること間違いなし。

他の連中もヤナ奴と言う意味では相当なんですが、あれは誇張を加えている事で、ある種別世界の者に対する嫌悪感なんですよ。漫画の中の世界だから笑ってられると言うか。ところがこいつときたら、あまりにも日常に依拠してるもんだから土足で踏みにじられるような嫌悪感ですね。

しかもまだまだこんなもんじゃない。

態度もでかく一緒にテレビを見るや、魔太郎のパパが見ているゴルフに対して、言わなくても良い難癖。まあ、こいつはこれが手段になっているのがまだ逆に言えば救いですけど、もうほんと「ああ、いるよこーゆー奴」感がずば抜けてます。

森安氏とのつき合いは無駄ではなかったんですかね…おっと。

昼飯も昼飯でコレ

↑笑顔がね、コイツの最もむかつく部分の一つなんですね。誰かが書いていたように、「描写は総て観察によって成り立つ」の極めつけです。

この、暴力でも何でもない攻撃は日常生活において究極にタチが悪いですな。なんせ悪いコトしてない訳ですし、文句つけると自分もいやな気分になるからしたくない。この人間関係の悪しきバッドゾーンをこうも描き切らなくても。

挙げ句にとどめがコレ

↑やめてくれええええええ!!!

ここまでしても、恐らく現実的にはホントに追い出せないんじゃないかと思えるあたりが、この話の本当に怖い部分なのです。

通り魔と一緒で、「やられたら終わり」的な事って存在するんですよね。マナーとかそういうレベルでも大なり小なり同じ事で、自分がヤナ気分になったら、それでもう終わりな訳です。注意したりすること自体もヤナ気分な訳で。人間関係ってのは底なしの題材であることは確かです。

そしていよいよ、攻撃隊長登場。その名も暴太郎! 魔太郎は特にA先生の「そのまま」ネーミングセンスが堪能できる作品ですが、中でも群を抜いて強力なネーミングですね。苗字はまだ諦めがつくもんですが、名前でこれだけの凶暴さは類を見ないですね。

しかもコイツもコレ

↑ノオオオオオオ!! 擬音の凄まじさと相まってのこのムカツキ度。繋がった眉毛もあまりにもポイント高し!(くれぐれも言い添えますが、決して眉毛が繋がっているからムカツク訳ではないですよ。こいつがコレで眉毛が繋がっているから倍増する訳で)

くらもちふさこ先生の「天然コケッコー」と言う大好きな漫画があるんですが、その中に登場する「しげさん」なるキャラが、これと同質の嫌悪感を味あわせてくれる希有なキャラです。あのキャラも本を破り捨てたくなるキャラの一人として漫画史に残すべきです。未読の方は作品自体も素直に面白いので、読まれることをお薦めします。ただ、そのキャラが出てくる話だけは正視に耐えない事は保証しますのでご注意を。(ちなみに「しげさん」も眉毛繋がってます)

そしていよいよヤドカリ一家登場!

↑暴太郎曰く「本隊」だそうです。祖父母から子どもまでパーフェクトにタチ悪し。それにしてもA先生ときたらありとあらゆるムカつくキャラデザインを有していて圧巻です。背負っている子どもまで律儀に性悪なのは傑作。

もうこんなの来たらどうかしてしまいます。

男の子なんて服に「ヤドカリ」の絵をプリントしている始末。

ここまで入念というか完膚無きまでに嫌悪感を積み重ねてくれると、いよいよ魔太郎の復讐でカタルシス爆発と持ってくる凄まじい感情移入度です。

そしていよいよコレ

↑きたあああ!! これぞA節!! 4コマ使って黒バックの生首魔太郎が、that's魔太郎としか言いようのない表情で豹変していく極めつけの演出。これで盛り上がらなきゃ嘘だ。

陰も陽も盛り上げる演出法は同じ。本当に物語を盛り上げる演出を身につけた人はやっぱり強いですよ。

なのに!!

ここまで盛り上げておいて、何と魔太郎ときたら「うらみ念法 まねきネコ!!」とかほざいて、例の主犯を他の人に押しつけるという、呆気にとられる方法で難を逃れる。

散々直接的手段=殺しでウラミをはらしてきた魔太郎なのに、なんとこいつら一家になんら制裁を加えぬまま、自らの家を家族を守る方法をとる。

しかし、このオチの性で、子どもの頃のボクは究極に恐怖のどん底へ突き落とされた訳です。

こいつはらまだ居る!!

と。

こいつらには手の施しようがなく、現在この時も次々と他人の家を蹂躙しているんですから。これは恐かった。個人的都市伝説ナンバー1です。

玄関に「ヤドカリ一家お断り」って貼ったって駄目なわけですからね。

しかも他人ならまだしも、この手の恐怖と嫌悪感は、身内の間でも現実起こり得ると言うやるせなさ。

いやあ、本当にレッド・ゾーンですなあ、この話は。

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で、まだ魔太郎なんですけど、

掲示板にもあったオリジナル版4巻の表紙。

笑えます。ハッキリ言って。

コレですもん。

↑掲示板のM6さんがおっしゃっている通り、「気の毒な人」と言う形容が、コレ以上ないほどハマる魔太郎が泣け笑い。

そして、コレ

↑コイツの表情。ド真ん中でコレですからねえ。A先生絶対確信犯ですな。確かにタダでさえ本能的な部分でイジメたくなる要素満点の魔太郎ですけど、マントとバラ模様の服を着てコレされたら、今後近づけない事は必至です。ある意味自衛手段としては最善かも。いや、学校にいられなくなるか。

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と言うわけで、ここ数回べらぼうな調子で魔太郎三昧だったわけですが、「まんが道」別にサイトを設けたぐらいですから、「魔太郎」も設けた方が言いような気がしてます。

ですが、今回はサっと「タイトル」が思いつかないんですよね。(ちなみに相棒のすばるさんのアイデアは「うらみ念法帳」と言う、山田風太郎的なモノでした)

そこで、もし何か良いのを思いついたら、メールにて教えていただけると嬉しいです。面白いモノがあったら発表させていただきたいと思います。

ではでは。