美味しんぼ

すばるさんが文庫になったのを機に「美味しんぼ」を集め始めた。以前から面白い面白いとは聞いていたし、昔アニメ化の際に1話目「(当然だが)豆腐と水」とかを観て狂喜乱舞したモノだが、改めてマンガを読むに正直呆気にとられるほどハマった。ははははは。
(ちなみに、例の局地的日常用語の一つで、「アンコウの肝ですよ」と言うのがある。当然これも美味しんぼ二話目からの刷り込みだ。偉そうでしたり気な口調を表現するときの枕詞)

今回の1巻目とか2巻目とかって、ジョジョの奇妙な冒険第4部での傑作中の傑作「イタリヤ料理を食べに行こう」で盛大にパクられる、「過剰な絶賛」描写があまりないんですね。まあ、この時点でも充分過剰でしたが。

でも、幾らご託並べても、F先生の旨そ描写には到底及ばないなあ。

と言うよりも正直「食べたい」とは思わせるけど、「美味しそう」じゃないんだよなあ。あれに出てくる食べ物って。やっぱり画力でしょうか。それとも食べた人間の反応が美味しそうじゃないからかなあ。

とはいっても、F先生は「不味そう」なモノに関しても相当の超絶テクニックの持ち主なのが、あきれるやら尊敬するやらだ。

全マンガ史の中でも、その不味そうな描写では群を抜きすぎて孤高の感もあるコレ

↑お腹の中から変なモノがこみ上げそうな程の不味そさだあ。左目の描写の凄惨に加えて、口にしているモノの不味そうな感じが異常。ちなみに食べてるのは犬があさっていた「旨そうな」残飯。おかげでのび太は命拾い。垂れ下がった麺が極まった激不味感。

しかも台詞が

「ウグッ、」「グフ……」「ムムム……」(ムムムって凄いなあ)

でしょう。もう何度も真似しましたよコレ。

と言うわけで、光を描くには影も必要だという事を知り尽くした天才がF先生だった…と。まあ、キレにまとめてみました。

いや、白状します。上のを使いたかっただけっス。

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雄山といえば、初期雄山。

魚のアラ料理を用意してお相撲さんの激励会を催そうとする社主ですが(語尾が常に「〜す」と言う安直な力士感覚も笑えます)、それが実はアラ違いで大恥をかくかもしれないって話です。

海原雄山が道の真ん中で山岡を呼び止めるや毒舌開始。そして最後のとどめにコレをかましてくれます。

↑とにかく口に出してみると分かるんですが、この笑いって表情と全然あって居ないばかりか、科白の後ろにくる類の笑い方じゃないですよね。

「わあっ」て部分が総てのポイントです。

なんで、「わあっ」だよ。

兎に角猛烈に笑えて仕方がなかったです。

でも、この時は珍しく雄山が助け船をだしているんです。こんな船居るか。

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病気の時の清涼剤は漫画に限るのですが(読むのが楽)、すばるさん共々「美味しんぼ」を楽しんでます。やたらと面白いです。

今回すばるさんが文庫版では飽きたらず、結婚話のあたりを読みたくなってしまったようで、フライングして通常版の44巻〜48巻を購入しました。

結婚話も凄く良いんですが、その中でも特に笑ったのが、山岡が共同生活に対する不安を吐露するくだり。3日も一緒にいるとその相手が嫌いになると言う山岡が例に出すのが「知り合いの劇画原作者」の話。

「知り合いの劇画原作者」と表現して、なんの事はない雁屋哲本人の事をアレコレと話のネタにするんですが、この辺りの開き直り方が素晴らしく笑える。

「つい最近20周年を祝った…」

とか山岡が呟くんですが、お前幾つなんだよと。

そして、その事に対してあれこれセリフにのせて叩く叩く。自分事だからみそクソに言うのが面白い。

「要するに幼児性が抜けきれず、その上精神がねじくれちゃってるのよ!」
「それは心の底から愛していない証拠です」
「一人前の成熟した大人とはいえません」
「非常識でおかしな感覚の人」

と兎に角けなすけなす。ははははは。

加えて、作中ことあるごとに

「でもその劇画原作者の場合は…」
「君の知り合いの劇画原作者だって」

と言う具合に、一般の人間が使うことなどほぼないと思われるこの

劇画原作者

と言う肩書きをいちいち強調するのが笑えるんですね。

まあ、自分の話を謙遜する手法として「知り合い」の話にしてしまう事は良くあることですが、敢えて劇画原作者って呼称する辺りに「あなどれない奴の爆発力 」(byディオ・ブランドー)を感じますね。

昔途中まで読んでいた「男組」も安い雑誌コミックで発売されていたので、コンビニで手にとったんですが…

ほんとあなどれないですよ。色んな意味で雁屋哲氏は。ははははは。

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で、

「美味しんぼ」なんですけどね。

またまた最新文庫版が出たので早速読んだんですが、その中でもかなり強烈な雄山譚が一つありました。

結婚後の話も平行して読んでいるんですが、後期の達観した人間として優れた雄山がたまにやらかす罵詈雑言も楽しいんですが、この中期雄山の

やつあたり

だらけの爆発感は絶品。

とにかく理不尽極まるというか、人間としての器量がトコトン小さいがゆえに産まれる素晴らしい味わいはまさに中期雄山ならではです。

そんな中久しぶりに登場したと思ったら、岡星の弟で大のお気に入りの良三が出してきた料理に不敵に大喜びするや、椀方とかに(重要な立場らしいです)抜擢しようとして試験をやらかすんです。

勝手に抜擢しておいて試験するって感覚も「上の者」感が強くて好きですが、第2試験で作らせたすまし汁のデキに激怒(ははははは)

それもコレもんで

↑結婚披露宴の席で、後期雄山が山岡の怨み節の原因である母親(雄山妻)への執拗な叱責を、延々自己弁護するという感動的な場面がありますが、この叱責も猛烈な素晴らしさ。そんじょそこらの人間じゃあ、幾ら怒っても憤慨してもお椀ごとすまし汁(すまし汁…)を相手に叩きつける何て芸当は出来ないですよ。

恐らくこういった事を奥さんに(山岡母)に何度も執拗にやっていたようですので、周りが山岡に「早く仲直りしろよ。大人げないぞ」と無責任なことを言っても無理でしょうな。

もうこのあたりからして、雄山ヒートが全開なので、読んでいて凄いカタルシス。

眼をかけていた良三が出ていってしまうや、怒りのやり場に困る雄山が実に素晴らしく、箸が転がっても激怒しそうな一触即発の状態。

車が混んでいるや、早速コレ

↑カッコイイ!! 雄山の悪辣極まる愚民どもへの貴族意識の爆発は常に琴線にふれまくって困ります。馬鹿どもですからね、馬鹿ども。しかも自分も車に乗っていてこれですからすこぶる最高。悪の魅力とは即ちコレですよ。心の中で思っていることを臆面もなく説得力を持ってズバリ言いきってしまう。ただ、このコマを至高に導いているのは勿論隣の中川さんの顔なんですがね。

完全にビビリまくっているのが実に良いです。そりゃそうですよ、こんな事で怒りまくっている大の大人相手にどうしようもないでしょう。しかもそれが主人で芸術家で雄山なんですから進退窮まった状態。

「ははっ。」

ってセリフもただ事ではない味だし過ぎ。

セリフだけでもダメ、表情だけでもダメ、雄山が隣にいるだけでもダメ。と言う完成度の高さ。漫画芸術の極みですね。

しかも雄山ときたら、良三が居なくなって美味しいご飯が食べられなくなるや、いきなり

「ちっ……」

と舌打ちまでして文句ブーブー。あげくに

「良三は帰って来んか」

等とべらぼうな事を真顔で言い放ちますからね。大物です。

この巻て、一話目から別の目をかけた若者「宮井」にも雄山爆発していてるんです。それも自分の勘違いを棚に上げて激怒。反省の色まるでなしですな。

まあ、そういう所も雄山信者にとっては、イコール

「心の深いお方」「大きな器量の持ち主」

なんつう異常な曲解を産むんですが…

でまあ、山岡の協力を得た良三が、シジミの違いに気付いて一件落着なんですが、面白くないのは雄山。自分の息子にまで嫉妬の炎を燃え上がらせる。

俺ナンバー1が悪の資格ですからね、凄みが違いますよ。

まあ、コレみてください。

↑決まった! ちょっと飛び散る漫符もポイントですが、心底不愉快そうな面がいいですねえ。「しかし不愉快な…」はポイント高し。

いやはやホント最近はすっかり美味しんぼにやられっぱなしですよ。雁屋哲ホント面白いです。

噂の「野望の王国」も読みたくて仕方がないんですが、探すと無いモンですね。ううううん、ないとなったら読みたくなるのが心情ですからねえ。こりゃ探さないと。サルまんを更に楽しむためにも。

雁屋哲の面白さを異常に理解していらっしゃる方のページがこちら。とにかく本編を読んでいようがいまいが、何故かその凄まじい面白さが伝わる希有なページです。

自称劇画原作者はやっぱり凄いですよ。スカパーせっかくあるんだから「UFO戦士ダイアポロン」観なきゃ。

最後にこの話最高の雄山の一言を

「ええい、腹が立つ!! こんな馬鹿者を買いかぶった、私自身に腹が立つ!!」
(↑言ってみたさ過ぎ)

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で、

懲りずに「美味しんぼ」なんですが。

今回はボーナス富豪様のすばるさんが大量に買ってきた後期美味しんぼを読んでました。

水だしコーヒーを飲む巻なんですが、怒濤のような調子の良さも芸術的ですが、例の究極の賛美も遂に行き着くところまで来たと言う感じを受けました。

それがコレ

↑「何も言いたくない」! 素晴らしいですよゆう子さん。大笑いしました。

で、これを受けた山岡の旦那がまた格好良くて、

曰く

「まったくだ……」

しかも、その舌の根も乾かぬ内に(なんと同じ吹き出しで)、間髪入れずコレ

「香りと味の金波銀波に揺られてたゆたう快感ってやつだよね。」

うおおお。

金波銀波に揺られてたゆたうなんて表現は恥ずかしながら初めて聴きました。凄まじい絶賛だと言うことは分かる説得力。

何も言いたくないクセにこれもんのコトが軽々と言えるんですから、流石の美味しんぼ夫婦ですな。

ワインと日本酒の話でも山岡の旦那は笑顔で暴走。

雄山と違って山岡の持ち味はひねくれた美学なんですが、コレもまた絶品。

「それが先入観と言うか、
愚かな思いこみと言うか、
西洋のものなら何でもありがたがる
舶来崇拝主義と言うか……」

言うか三段活用。

だてに雄山の息子じゃないですね。しっかりとした持ち味でこれはこれでいいじゃない。

しかし、舶来崇拝主義って…

しかも次の巻なんて表紙からして大爆笑。

まあコレ

「フランケンシュタインを愛する男」を虚仮にした男並の手の小ささですが、表紙でこんな表情を購買者に叩きつける花咲アキラのセンスに脱帽。

55巻。表紙だけでも必見です。

ちなみに、上記の話が収録された54巻は、後期雄山にしてはメタクソ節が炸裂していて最高の「日本酒の実力」も収録されているので楽しめます。

まあ、理にかなってたり、何気に山岡達に助け船を出す形になったりするあたりはどうにも頂けないですが。

もっとも、そんなのはゆう子さんの菩薩解釈な訳で、雄山の腹の内はボクらが一番分かってますけどね。

ではでは。